2015/01/26

伝えようとする、伝える、伝わる

むかしパリに行ったときの写真を整理しておりましたら、
こんなのが出てきました。
















Fumer tue.
直訳すると、“喫煙は、殺す”というメッセージだそうです。
・・・こわいよー。こわいよー。

“あなたの健康を害する恐れがありますので、よく考えてウンヌン”
というのとは全然違う伝わり方をするなあ、と思いました。
当時は煙草吸ってたので、いろいろと考えさせられ、
これが理由ではありませんが、その後煙草はやめました。

今ひさしぶりに写真を見ると、当時とは違うことを感じました。

日本では、こんな直截な表現をするとクレームが来そうな気がします。
というか、海外の煙草パッケージの警告は傲慢だ、と主張している
おじさんを、パリから帰ってあまり経たないうちに電車で見かけて、
印象的だったので覚えているのですが。
連れらしき人たちも強く同意していたのも印象的でした。

“だから自己責任なので、よく考えなさいよ。”という結論は同じでも、
その前に来る説明が、懇切丁寧で優しい口調でないと気に入らない、
という趣旨であったように聞こえました。

考えてみれば、日本式の『あなたが肺気腫になる可能性を高めます。』
のほうが、『喫煙は、殺す』よりも科学的には正確なんでしょうから、
正しいのは日本式だ、とほっとけばいいようなものですが、
そこを言いたいわけでもないらしい。

“言い方が気に入らない”ということなんでしょう。
とくに珍しくもなく、私も仕事で経験のある話です。

もっと言うと、『科学的・物理的な事実を説明するんじゃなくて、
俺が気に入るわかりやすい言い方はどういうものかをお前のほうで理解して、
俺がわかるように言え。』
みたいな要求をする人がごく稀にいて、びっくりしたことがあります。

住宅の設計が私の仕事なので、住宅の快適性能・構造的性能など
数字で示せる部分も、使い勝手や見た目のような、
個々に感じ取り方が違う観念的な部分も、たくさん説明します。
自分では噛み砕いて言ったつもりでも、伝わらない場合も・・・

そして、伝わらない原因もさまざま。
もちろん、私の口調・声色・選んだ言葉などが悪い場合もある。
逆に聞く側が、気に入らなくて最初から聞く気がない場合や、
わからないものをわからないと言うのが面倒だったり、
こちらに遠慮なさって聞き直さない、ということもあります。

伝える、とか伝わる、とか言いますが、結局のところ、
意思や思考の伝達という行為は、自分ひとりでは
50%の完成度しかないんだな、と感じるのです。

語彙も客観性も科学・物理的裏付けも100%正確に
過不足なく伝えることができたとして(現実には不可能ですが)、
それでも相手が、自分に都合の悪いところは聞き流したり、
都合の良いところだけ誇張して聞いたりした結果、
それが言ったことの10%にしかならないならば、足して2で割って55%。

逆に言いたいことの6割くらいしかうまく言えなかった、と落ち込んでも、
相手の方が想像力と知識があって、90%を聞き取ってくれれば
意思伝達は75%の完成度。
そうやって助けて頂いた経験も、何度もあります。

さっきの煙草の箱も、“吸えば死ぬ”と身も蓋もなく書いてあるのを、
ああそうよねいつか死ぬし、って言いながら買う人が多いのがフランス。
受け取る側がそれでいいと思ってるので、直截な言い方で伝わるのかも。
書き方だけで伝わり方が違う、というものでもないなあ、と思います。

余談ですが、パリの人は本当に煙草が好きらしいです。
綺麗な女性が、マダムもマドモワゼルも、
カフェのテラス席でぱかぱか吸っています。
またかっこいいんだ、これが。
思春期にパリに行くと悪いことも覚える気がする(笑)

煙草吸ってる人が写ってるわけじゃないですが。













そうは言っても、相手に依るんだから伝え方はどうでもいい、とは思いません。
やっぱり努力はしなくてはならないし、私自身もうまく伝わる言い方や言葉を
たくさん持っている人がかっこいいと思うのです。

それでいま、文章講座に行っています。
技巧的なことを覚えるのも必要ですが、意思や思考を問い直すことの
重要性なんかも、感じさせられています。

好きな文学の一節を抜き書きしてみるといい、というアドバイスがあって、
やってみたら楽しい!自分の文体の傾向、好みがはっきりしてくると、
言いたいことも明確になる気がします。
その割に今日の投稿がかなり長くなっているのは目をつぶってください。











そして、同じ方が講師として行われるもう一つのセミナーは、
良い家を建てるのに必要なこと、というようなテーマなんですが、
これが面白いのです。

私は、お客様にプレゼンするときの伝え方を学ぶ目的で受けたのですが、
第一回が本当に面白かった。私のような目的でも、これから家を建てる方が
参考にする場合でも、大事なことが何であるか、目的を見失って
囚われていたものが、溶け去るようになくなって、考えがクリアになります。

囚われているものなどない、と思う方もいるかも知れませんが、
やっぱり大なり小なりあるんです。ということに気がつくんです。
これはすごい体験ですよ。

そしてその第二回の講座に、なんと!
私もしゃべる側で参加させて頂くことが急遽決まりました。

こんなに長い記事の最後が宣伝かよ、と思ったあなた。
それは私の伝え方が悪いんです、すみません。

具体的に家を建てようと思っていなくても、聞いて損はしないです、絶対。
本当に聞いて頂きたいと思います、加藤さんの話を。
住宅のこまごました話、ではなくて、生きていく、ということに
目が向きます。視野が広がります。伝わってきます。

一方的にしゃべるのを聞くだけでなく、疑問に思ってらっしゃることを
お尋ねして、お答えする時間も取ってあり、そこの部分で
私もお手伝いさせて頂く、という感じになると思います。

プロ編集者と学ぶ「書くのが楽しくなる」文章講座

快適・健康・省エネ・長寿命住宅を実現する21の法則
(私がお手伝いするのはこっちです)

(両方ともNHK文化センター盛岡教室のHPに飛びます)

宣伝は宣伝でも本当に自信を持ってお薦めできる宣伝なんです。
こういうときにも、きちんと伝える力が必要ですねー。