夜空が明るく、帰り道、目の前の
岩手山が青く沈むように闇に佇んでいて、
少しのあいだ眺めました。
星が綺麗でした。
先日、打合せをしたお客様から頂いたメールに、
亡くなったお母様と歩く夜道で、
「星が綺麗だね」と声をかけた時、「そうだな」と言って
足を止めてくれた思い出に、お母様の優しさを感じた、
とありました。
こんな一文も引用しておられました。
「…人が喜んだり、悲しみに耐える時間は、
静謐であることが望ましいのだ。
喜びがつかの間でも淋しいし、
苦しいことがすぐに解消されては、
切ないことだが人生を学ぶことも知ることも希薄になる。
…
それを噛みしめる時間というものこそ、
生きている証なのだろう。
私たちは、少し急ぎすぎたのかもしれない。」
『それでも前へ進む』(伊集院静/講談社)
「見て、星が綺麗」と、好きな人に言われて
胸が温かくなった夜のことを、
静謐な星空を眺めながら、不意に思い出しました。