2021/03/25

バリアフリー対応はどうすべきか【ウェブ茶話会(仮) 6 】

 Q.住宅新築の際、将来的に体が不自由になった時のために
バリアフリー仕様にしておく場合、どこまでやっておくべきか。

















A.これだけやっておけばいい、というお手軽ポイントはありません。

住宅のバリアフリーと聞いて連想するものといえば、
室内の床の段差をなくすこと、廊下に手摺をつけること、
前面道路から玄関までをスロープにすること、
ホームエレベーター、などでしょうか。

ごく一般的な木造住宅の場合、廊下の実際の幅は78cm程度です。
ここに手摺を付けると、手摺笠木(握る部分、大抵は木製)が
直径3cmぐらい、壁から持ち出す幅が4cm程度ですので、
実際の幅は71cm程度まで狭まり、廊下の両側に手摺を付ければ
さらに狭まって64cmぐらいの計算になります。
歩くだけならまだ使えますが、状況が悪化して車椅子生活になったら、
直進するのも不自由な幅です。

玄関先では、段差をスロープにするのはいいとしても
その距離が短いと勾配がきつくなってしまい、手漕ぎの車椅子では
自力で上がれない、というケースもよくあります。

これらはバリアフリー改修の場合によく直面する問題ですが、
根本からきちんと考えておらず、よくある住宅の考え方に
ただ単純にスロープや手摺を足しただけであれば、
新築の場合でも同じ問題が生じます。

とはいえ今現在、体のどこも不自由がない状態なら、
将来的にどこが不自由になるかは誰にもわからないのですから、
適切な対応も取りようがありません。
だからといって家じゅうどの場所も、将来何があっても
バリアフリーにできるようなつくりにしておこう、
というのも予算が掛かりすぎて現実的ではありません。

本来バリアフリーというのは、具体的で詳細な状況がわからない限り
完全な対応はできないもので、「もっとも適切な対症療法」のような
側面をそもそも持ち合わせていると思います。

そこで、具体的なバリア(障壁)があってもなくても
使い勝手がよいようにきちんと考えよう、という思想ができて、
ユニバーサルデザインと名付けられました。
ユニバーサルuniversalには「一般的、共通な」という意味があります。
障害者、高齢者に限らず、障害のない人、老若男女に共通して
使いやすいようにする、ということです。

具体的にどうすればいいかについては、考え方の提唱者である
ノースカロライナ州立大学ユニバーサルデザインセンターが、
以下の通りの7原則を発表しています。
1. どんな人でも公平に使えること。
(Equitable use / 公平な利用)
2. 使う上での柔軟性があること。
(Flexibility in use / 利用における柔軟性)
3. 使い方が簡単で自明であること。
(Simple and intuitive / 単純で直感的な利用)
4. 必要な情報がすぐに分かること。
(Perceptible information / 認知できる情報)
5. 簡単なミスが危険につながらないこと。
(Tolerance for error / うっかりミスの許容)
6. 身体への過度な負担を必要としないこと。
(Low physical effort / 少ない身体的な努力)
7. 利用のための十分な大きさと空間が確保されていること。
(Size and space for approach and use / 接近や利用のためのサイズと空間)
  
段差がない、などのタイプの具体性とは全く違いますが、
言葉自体はとてもわかりやすいと思います。

たとえば住宅において「2.使う上での柔軟性」を実現する場合。

もともと狭いトイレの中に、手摺を複数付けると
さらに狭くなって介助もしづらくなり、むしろ邪魔になります。
ですが、たとえ30cmでもいいから最初から幅の広い部屋にして
カウンターを付ければ、そこに手をついて立ち上がりやすくなります。
握力が弱まり手摺をうまく握れなくなるケースもあるので、
手摺がついていれば使いやすいとは限らないのです。
手摺が必要になったとしても、トイレ自体を少し広めに作っておけば
後から付けるのに困ることはないでしょう。

玄関も、段差がなければそれで良いとは限りません。
膝や足首などが弱ったり痛めたりした場合は、
腰を掛けて靴を脱ぎ履きできるほうが楽でスムーズなケースもあります。
ベンチを造り付けたり、スツールを置いたり出来るだけの広さがあれば、
後になって車椅子に対応するためにスロープを作ろうと思っても
やりようがありますが、三和土(たたき)とホールが合わせて1坪程度の
よくある玄関ではおそらく対応できないでしょう。

このように、玄関や水回り(トイレや洗面脱衣室)を
広めにとっておくだけでも、使い勝手がユニバーサルになって
誰もが住みやすく感じられるようになります。
間取りを考えるとき、これまではできるだけ削って狭くしてきた場所が、
まさにその狭さのために後からバリア(障壁)になることに目を向ければ、
家の考え方、見方も自ずと変わってきます。

あれを付ければ正解、これを取り入れれば解決、ではなくて、
従来の考え方をまず見直す。
本来のバリアフリー、ユニバーサルデザインはそこが出発点です。